女性のメンタルヘルス
女性は、排卵や月経によって約1か月という短いサイクルでホルモンバランスが大きく変化します。また、思春期、妊娠・出産、更年期、閉経といった長期サイクルでもホルモンバランスが大きく揺らぎながら変化します。学業や仕事、結婚、子育て、介護、こどもの独立、リタイアなど、ライフステージの変化もホルモンバランスや心身の状態に大きく影響します。こうしたことから、女性は特有の不調を起こしやすい傾向があります。
女性のメンタルヘルスに関連した疾患には、月経前症候群、更年期障害、思春期や妊娠・出産の時期に巣応じやすい抑うつ状態などがあり、気持ちの症状だけでなく身体的な症状が強くあらわれることもあります。
当院では、メンタルヘルスの専門的な立場から女性特有のお悩みの診察を行っています。生活指導や対処法のアドバイス、薬物治療などを主に行っており、漢方薬による治療や西洋薬と漢方薬の併用も可能です。些細なことでもお悩みがありましたら御相談ください。
月経前症候群(PMS)
月経の約3~10日前からイライラ・不眠・頭痛・下腹部の痛みなどの不快な症状を起こし、月経がはじまると症状が消えてしまいます。女性ホルモンの関与によって生じると考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。働く女性は7割以上が経験しているとされています。症状の内容や強さ、期間などは個人差が大きく、症状は150種以上もあるとされています。適切な治療で症状を改善できますので、疑わしい症状がある場合には御相談ください。
月経前症候群(PMS)の主な症状
身体にあらわれる症状と気持ちにあらわれる症状に分けられます。
身体にあらわれる症状
- 頭痛
- 首や肩のこり
- 乳房の張り・痛み
- 吐き気
- 下腹部の痛み
- 肌荒れ
- めまい
- 立ちくらみなど
気持ちにあらわれる症状
- イライラ
- 抑うつ状態
- 不眠
- 過眠
- 孤独やむなしさを強く感じる
- 集中力
- 判断力が低下するなど
月経前不快気分障害(PMDD)
月経前症候群(PMS)よりも多くの症状が現れ、程度も重く、日常生活への支障が大きい状態です。月経の1週間前あたりから症状が現れはじめ、月経開始または月経が終わる頃に症状が治まります。月経周期に合わせて長期間つらい症状を起こすことを繰り返しますので、心身への負担が大きく、QOL(生活の質)を大きく下げてしまい、人間関係などにも悪影響が出る可能性もあります。月経前症候群(PMS)と同様に、適切な治療で改善が見込めますので、月経周期に合わせて大きく体調が変わる場合は早めに御相談ください。
月経前症候群(PMS)と月経前不快気分障害(PMDD)の違い
症状やあらわれる時期などに共通したものが多いので混同されやすいのですが、どちらにも明確な診断基準があります。
月経前症候群(PMS)
生理周期の約5日前に症状が起こります。抑うつ状態・イライラ・不安といった感情症状、あるいは乳房の張り・腹部の違和感・むくみなどの身体症状から、症状がひとつ以上あると診断されます。
月経前不快気分障害(PMDD)
精神面の不安定さが強く出て、イライラや・抑うつ状態・怒りっぽくなるといった感情症状に加え、不眠、集中力低下、食事に関連した症状などの生活・行動・意欲に関与する症状があらわれるなどの基準によって診断されます。
月経前不快気分障害(PMDD)はホルモン療法の効果を得にくいとされていますが、当院では症状にきめ細かく合わせた抗うつ剤や抗不安薬などによる薬物療法、漢方薬による治療、心理療法などを適切に組み合わせることで改善に役立てています。月経前不快気分障害(PMDD)の症状はうつ病やパニック障害によって生じているケースもありますので、専門的な診察を受けることが適切な治療につながります。
妊娠や出産に関連する「うつ状態」
妊娠している時期の不安症状、産後の育児不安など、妊娠や出産の時期にはメンタルの不調を起こすことがよくあります。もともと不安定だった方だけでなく、以前には問題がなく妊娠や出産をきっかけにメンタルの不調があらわれるケースも少なくありません。突然強い症状があらわれることがあり、大きな戸惑いやつらさを抱えてしまうことがあります。
産後うつ病は、精神的な不調や心理障害が分娩後の数週間から数ヶ月程度続く状態とされています。出産直後にはホルモンバランスが大きく変化し、数時間おきに授乳する必要があるなど厳しいタイムスケジュールに振り回されて睡眠不足になり、環境も大きく変わります。さらに産褥期には貧血にもなりやすく、そうした要因も発症に関与していると考えられています。
どんな病気でも言えることですが、産褥期うつも早期の適切な治療で高い効果が期待できます。当院では妊娠・授乳中にも比較的安全とされている漢方薬による治療もおこなっていますので、不調を感じたらお気軽に御相談ください。
産後うつの主な症状
産後うつの症状は、一般のうつ病の症状と共通しており、気持ちにあらわれる症状、行動にあらわれる症状、身体にあらわれる症状に分けられます。
気持ちにあらわれる症状
- 理由なく、悲しい気持ち、寂しい気持ち、むなしい気持ちになる
- 気持ちが落ち込む
- イライラする
- 焦燥感がある。
行動にあらわれる症状
- やる気がなくなる
- 集中力がなくなる
- 興味がなくなる
- 関心がなくなる。
身体にあらわれる症状
- 頭痛
- 頭が重い
- 肩こり
- 不眠などの睡眠障害
- 便秘
- 食欲不振
- 身体の痛み
- 倦怠感
- 疲れやすい
更年期障害
更年期は、閉経の前5年、後5年を合わせた10年の期間のことです。個人差がありますが、45~55歳くらいに更年期になる方が多いとされています。閉経に向けて女性ホルモンの分泌が大きく揺らぎながら低下していくので、この時期にはさまざまな不調があらわれることが多くなっています。更年期障害の自覚症状があらわれる時期は、早ければ40歳代前半、遅ければ50歳代後半のこともあります。
症状の内容や強さ、あらわれる期間も人によって大きく異なり、ほとんど変化を感じない方がいる一方で、起き上がれないほど強い症状に何年も悩まされるケースもあります。主な症状には、突然のほてりやのぼせ、異常な発汗を起こすホットフラッシュがあります。イライラや不安、抑うつ状態、不眠、頭痛、肩こり、便秘など他にもさまざまな症状があり、複数の症状が生じることも珍しくありません。
更年期障害の主な症状
身体にあらわれる症状と、気持ちにあらわれる症状に分けられます。
身体にあらわれる症状
- 突然ののぼせやほてり
- 異常な発汗
- 動悸
- 息切れ
- 頭痛
- 肩こり
- 便秘など
気持ちにあらわれる症状
- イライラ
- 不眠
- 抑うつ状態
- もの忘れ
- 集中力の低下など